皆さんこんにちは!本日も発達障害等に関する学びや情報交換の場所となることを願って投稿させて頂きます。
今日のトピックは、「発達障害のつま先歩き」です。
発達障害の子どもは、よくつま先歩きをするのを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
まだ、発達障害があると知っていなくても、つま先歩きをしていれば発達障害のサインであるとも言われていますね。
「これって発達障害なの?」「どうしてつま先で歩くの?」と不安になりますよね。
なぜそう言われているのか、どのように気づけばいいのか、気づいたらどうすればいいのかを見ていきましょう。
目次
つま先歩きは発達障害のサイン?
発達障害児のよくある症状として「つま先歩き」が挙げられることが多いですが、実際はどうなのでしょうか。つま先立ちやつま先歩きをし出して、
「もしかして私の子どもは発達障害なの!?」
と心配される方もいるかも知れません。
つま先歩きになる原因などを見る前に、つま先で歩くとはどのような感じなのか。ずっとではないかも知れませんが、ほとんどを足の指の付け根付近をを使って歩くのが一般的です。
発達障害と直結する前に…
先ず、「つま先立ち」であってもすぐに「発達障害かも?」と不安になる必要はありません。立てるようになったり歩き始めたりする頃に、つま先立ちをしても成長過程にいるので、しばらく様子をみて大丈夫でしょう。
次に、立っている状態だけではなく、「つま先歩き」を始めたら何か原因があるかも知れないので、一度小児科の医者に診てもらいましょう。
つま先歩きが症状として見られる発達障害は、自閉症スペクトラム障害が多いと言われていますが、この症状が必ず出るのではなく、自閉症の主な症状である『コミュニケーションの困難等の症状』があるかを先に見る必要があります。
■必須症状
国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 「自閉症スペクトラム障害の早期発見ポイント」
・相互的な対人関係が苦手
・コミュニケーションが難しい
・関心や行動の限局的パターン化傾向
■しばしばみられる症状
・感覚過敏や鈍麻・多動・不器用
・アンバランスな知能
上記の「しばしば見られる症状」の中の「感覚過敏や鈍麻」が、つま先歩きの原因につながってきます。
発達障害によるつま先歩きの原因
自閉症スペクトラム障害のある子どもがつま先歩きをする原因を見ていきましょう。主に次の3つが挙げられます。
- 『感覚過敏』によって足の裏の刺激を避けているため
- 『感覚鈍麻』によって特別な歩き方をして自分で刺激を作っているため
- 脳を起きている状態にコントロールするため
感覚過敏
『感覚過敏』という症状は、健全児童に比べて、音や光、味、感触などの刺激に過剰反応してしまうことです。そのため、小さな音でも騒音のように聞こえたり、軽く何かに当たっても激痛に感じたりします。
感覚鈍麻
一方の『感覚鈍麻』は、先に触れた感覚過敏のような刺激に鈍感なので、暑さや味覚がわからなかったり、ケガや骨折をしても痛く感じなかったりします。
そのため、自分で体を叩いたり傷つけたりして刺激を求めてしまう時もあるのです。
また、感覚鈍麻の症状がある場合、「前庭覚」も鈍いことがあり得ます。
前庭覚とは、自律神経系やバランス感覚などの動作の基本となる平衡感覚のことです。ここでの感じ方が鈍いと、刺激を弱く感じることになります。
例えば、ハンモックなどでゆらゆらしていると眠くなりますが、これは前庭覚が弱い刺激を感じるので眠くなるのです。眠くなる時、私たちは起きるために無意識に首や腕を動かしたり、背筋を伸ばしたりして目を覚まそうとするでしょう。
同様に、弱い刺激しか感じれず眠くならないようにコントロールするために、子どもも自分の体を一部を動かして刺激を作る場合があります。そして、このことによってつま先歩きという行動につながるのです。
上記の理由によって、ずっとつま先歩きをしているというよりは、裸足の時だけ、階段を上がる時だけ、眠くなりそうな時だけなど限定された場合のみそのような歩き方になってしまうので、気づかない保護者も少なくありません。
つま先歩きの他の原因
発達障害以外のことによる原因もあります。
- 『先天性内反足』の足の変形によって足全体を使って歩けないため
- 脳性小児麻痺によって筋力が低下あるいは緊張しているため
『先天性内反足』とは、生まれつき足の骨の配列異常によって足の形が変形していることです。
原因は不明ですが、4種類の変形がありその内の1つ、足が下を向いている尖足だと、つま先で歩くことになってしまうのです。
後天性の原因として、脳性小児麻痺など脳の一部が麻痺してしまうと、筋力が低下したり、緊張した状態が続いたりして、足の関節が曲がり地面にかかとをつけれなくなってしまいます。
先天性内反足に関しては生まれた時にわかり、脳の麻痺に関しては経験していれば保護者は知っているはずなので、もしこの2点に当てはまらず、つま先歩きをしているようでしたら、医者に相談した方がいいでしょう。
気づくポイントと対応方法
これまでに述べたように、ずっとつま先歩きをしている訳ではないので、すぐに保護者が気づけない時があります。
また、気づいてもどうすればいいのか知らない方も多いでしょう。
特に注目すべき時期や気づいたら何をすればいいのかを見ていきます。
注目すべき時期
特に注目すべき時期、注意して観察する時期は、歩き始めた頃から3歳になる頃までが一番重要でしょう。参考に「ムーちゃんと手をつないで〜自閉症の娘が教えてくれたこと〜」の2巻で紹介されている例を見てください。
「つま先歩きが続くとかかとが年齢相応に発達せず、足首が固まってしまう」、「3歳なのであまり放置しない方がいい」と小児科の先生が伝えています。
自閉症スペクトラム障害の子どもを持つご家族の日常、悩み事、経験したことが漫画になっています。お母さんの不安な気持ちやお父さんのサポートの例なども書いてあるので、ぜひ読んでもらいたい1冊です。
一見、子どものつま先歩きはかわいくも見えますが、何度か見かけたら、どのような時にそうなるのか記録してください。この年齢の子どもがいるご家庭だと、保育園に預けることを考え始める、または決定することが多いでしょう。
保育園の先生に伝えたり、1~3歳の乳幼児健診や診察で医師に伝えやすくするためにも、記録をおすすめします。
同時に、先に述べた自閉症スペクトラム障害の必須症状である「相互的な対人関係が苦手」「コミュニケーションが難しい」「関心や行動の限局的パターン化傾向」もあるか見てみましょう。
気づいたらどうすればいいの?
何度か先にも述べましたが、小児科の医師に診てもらうことが大切です。乳幼児健診の時でもいいですし、個人的な診察でも構いません。
普段は何気ない、些細なことでももしかしたら発達障害の早期発見につながり、早い段階で子どもの支援ができます。また、長い間保護者がわからないまま心配し続ける状況も回避できるかも知れません。
上記のように、「この年齢で診断が下りないだろう」と思わず、記録をしたり注意して見ていて、「つま先歩きが続いてる」「コミュニケーションでの困難がある」などの状態が続けば、次のステップに進んでみましょう。
その時は、今まで気になったことの記録やメモなども一緒に持っていくと、医師も状況を把握しやすいですし、保護者も言い忘れなどを防げます。より正確に伝えることで最善の方法を提案してくれるでしょう。
つま先歩きを改善するには
では、つま先歩きの改善方法はどのようなものがあるのか、家でもできる支援方法はあるのか見ていきます。
理学療法(PT)
健診や診察で医者の判断により、ほとんどの場合、最初に理学療法をするように勧められるでしょう。
理学療法とは、身体動作の分野で支援する現場で使われている療法ですが、発達障害児に対しては、運動機能の発達の促進やその子が自分の体の理解を深めるための指導をしていきます。
医師の診断を元に、短期的または長期的な目標を立てて計画し、内容としては、日常における基本的な動作(立つ、座るなど)や重心移動、上半身と下半身の異なる動きなどを組み合わせて、大きく体を動かしていくことになるでしょう。
また、作業療法(OT)と併用して行う場合もあります。作業療法は、大きく体を動かす理学療法と異なって、手元の細かな動きや姿勢を保ち続けることなどの動作の発達を促して、日常生活の質の向上を目指します。
実際にこの支援を受けてみると、遊んでばかりのように見えるかも知れませんが、小さい子に体を動かしてもらうには、遊びの中で動かしてもらうことが1番なのです。
刺激に敏感、鈍感でも、その刺激に慣れたり、その刺激をコントロールしたりしていくことが重要です。また、どの素材なら不快に感じないのか、床や身の回りの物で変えられるもののアドバイスももらえます。
小児科の医師に紹介された医療機関や発達支援施設によって、理学療法士と作業療法士の専門家がそれぞれいたり、片方しかいなかったりするので、自分の子どもが必要な支援をしっかりと理解して医師と相談しながら進めていきましょう。
遊んで改善する
次に、家でもできる支援を見ていきましょう。もちろん、担当の医師や理学療法士に診察してもらって、どのような支援をできるか理解してからですが、家でもかかとをつけて歩けるようになるために支援できる方法はあります。
上記でも述べたように、理学療法士や療育の現場では、遊びながら体を動かし、どのように刺激を感じるのかを子ども自身が知りながら支援をしていくので、ご家庭でも遊びの中に取り入れることができます。
ご家庭で支援できる遊びは次の通りです。
- クッションやまくらを床に並べてその上を歩く
- マットや布団で大小の山を作って一方からもう一方にジャンプする
- 坂道などがある場所での散歩やハイキング
また、つま先歩きの改善だけではなく、感覚刺激の遊びは公園にたくさんあるので、親子で一緒に遊んで子どもが進んで体を動かせるようにしてみましょう。その際は、手を持ってあげたり、体を支えたりできるように近くにいてください。
- 平均台の上を歩く
- トランポリンや縄跳びで飛ぶ
- アスレチック遊具で上ったり下りたりする
- ブランコや滑り台で遊ぶ
このように、医療機関や発達支援施設だけではなく、ご家族でも支援につながることはたくさんありますので、上記以外でも担当の医師や施設の指導員などからアドバイスをもらって実践してみましょう。
まとめ
今日の記事をまとめると次のとおりです。
- 「つま先立ち」=発達障害ではないが、つま先歩きに気づいたら一度小児科の医師に相談してみる
- 医師に相談する時、つま先歩きだけでなく他にコミュニケーションの困難等の症状がないかも確認する
- 注目すべき時期は、歩き始めてから3歳頃まで
- 改善方法は、理学療法、あるいは作業療法との併用で行われる
- 家庭で遊びながら支援できる方法もある
不安な気持ちがあるかも知れませんが、早く気づけることが早期支援につながり、日常生活における支障も少なくなっていくかも知れません。
もし、不安なことや理解できなかったことがあれば抱え込まず、担当の医師や理学療法士、発達支援施設の担当者などに気軽に相談してみてください。