皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!今回のキーワードは「発達障害 運動」についてです。
皆さんは、発達障害の一種である「発達性協調運動障害(DCD)」というものをご存じですか。
症状を簡単に言うと、「病的に運動が苦手」というものです。
実はこの障害をもつ人の割合は6~10%、30人学級で言うとクラスに2,3人はいるということになります。
意外と多いと思いませんか。
「うちの子、もしかしてこの障害があるのかな」と思われた方もいるでしょう。
適切な支援で改善していけることもあるので、まずは、どんな障害なのかを知ることから始めましょう!
でも、DCDをもつお子さんにとっては、深刻な症状を呈する障害なので、ぜひ多くの方に知ってもらいたいところです。
目次
発達性協調運動障害(DCD)は運動に関する発達障害
発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:以下DCD)は、発達障害の一つで、運動に関する障害です。
“Decelopmental”は日本語だと「(心身の)発達上の」、”Disorder”は「障害」などの意味があります。
“Coordination”は英語で「対等関係」などを表す単語ですが「洋服をコーディネートする」と表現することがあるように「整合」を表すときにも使われます。
日本語表現で使われる場合とは異なり、英語では「(筋肉運動の)整合」と筋肉運動に関する意味合いが強いです。
DCDとは
DCDは、身体機能に問題はないけれど、脳が身体を動かす指令を出すことに障害があり、うまく身体を動かすことができないという障害です。
なので、運動に症状の出る障害ではありますが、身体機能の障害ではなく、脳機能の障害だと言えます。
また、DCDは、その症状が乳児期から現れる先天的な障害とされており、同様の症状が出ていたとしても事故や病気が原因の後天的なものとは区別されます。
そもそも「協調運動」とは
協調運動とは、目と手や、手と足など、別々に動く機能をまとめて、一つの運動を為すものを言います。
見て書き写す、投げられたボールをキャッチする、スキップするといったことも協調運動に当たります。
DCDはこのような協調運動に支障が出る障害と言えます。
粗大運動と微細運動(巧緻運動)
人間の運動は、『粗大運動』と『微細運動』のふたつに大別できます。
- 粗大運動
姿勢や移動に関する運動のこと - 微細運動(巧緻運動)
感覚器官や粗大運動で得られた情報をもとに、小さい筋肉を調整しおこなう運動のこと
DCDでは、このどちらか、または両方における協調運動が不正確であったりペースが遅かったりと、ぎこちなさがでてきます。
人間は粗大運動→微細運動の順に身に着けていくといわれています。粗大運動は問題なかったが、微細運動が苦手という場合には、ある程度成長したあとに気づかれる場合もあります。
DCDの症状
DCDでは、具体的にはどのような症状が出るのでしょうか。乳幼児期に以下のような症状が表れます。
<乳児期>
- ミルクを飲むときによくむせる。
- うまく寝返りできない。
- ハイハイがぎこちない。
- お座りや、歩きはじめが遅い。
<幼児期>
- 発語がはっきりせず、聞き取りにくい話し方をする。
- ぬり絵をうまく塗れない。
- スプーン、コップをうまく使えない。
- はさみやのりをうまく使えない。
- 着替えが難しい、遅い。
- 階段の上り下りが1段ずつ、もしくはぎこちない。
- うんちをうまく拭けない。
- 公園の遊具でうまく遊べない。
- 三輪車をうまくこげない。
(参照:NHK福祉情報サイト ハートネット)
他の多くの発達障害同様、成長するにつれて症状が緩和されていくということはありますが、ほとんどの場合が大人になっても症状は残存します。
つまり、発達段階に応じた運動がうまくできないという状態は、継続されるのです。
大人になってからも、パズルの組み立て、球技、字を書く、運転するなどの動作が遅かったり、正確さにかけたりするといった症状の残る可能性が、非常に高いです。
「運動」と言うと、スポーツなどを連想し「運動音痴ってことね」と思ってしまう方もいるかもしれません。
しかし、上記の症状を見ると、発達性協調運動障害の「運動」が指す内容が、日常生活におけるあらゆる行動を指すことに気づくでしょう。
この障害は、単に運動音痴ということではなく、不器用さが日常生活に支障をきたす可能性があるということになるのです。
でも、周囲からなかなか気づいてもらえないので、適切な支援を受けられていない子が多いのが現状です。
記事の後半ではリハビリや支援の具体的な方法について紹介していますが『運動療法』も効果的です。運動療法については、こちらの記事も参考になさってください。
DCDの診断
DCDの診断は、専門医が総合的に下します。
診断基準などもこれからご紹介しますが、診断の参考にされるものであって、基準だけで診断されるものではないことは知っておきましょう。
DSM-5の診断基準
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル:アメリカ精神医学会)では診断基準を以下のように示しています。
A.協調運動技能の獲得や遂行が、その人の生活年齢や技能の学習および使用の機会に応じて期待されているものよりも明らかに劣っている。その困難さは、不器用(例:物を落とす、または物にぶつかる)、運動技能(例:物を掴む、はさみや刃物を使う、書字、自転車に乗る、スポーツに参加する)の遂行における遅さと不正確さによって明らかになる。
B.診断基準Aにおける運動技能の欠如は、生活年齢にふさわしい日常生活動作(例:自己管理、自己保全)を著明および持続的に妨げており、学業または学校での生産性、就労前および就労後の活動、余暇、および遊びに影響を与えている。
C.この症状の始まりは発達段階早期である。
D.この運動技能の欠如は、知的能力障害(知的発達症)や視力障害によってはうまく説明されず、運動に影響を与える神経疾患(例:脳性麻痺、筋ジストロフィー、変性疾患)によるものではない。
うつ病、パニック障害の治療、デイケアは|心療内科、神経科 ハートクリニック
つまり、発達段階の早期から協調運動が困難なもので、日常生活に支障がでてしまっている状態を指します。さらに、他の障害や疾患に当てはまらないもの、とされています。
上記の基準に加え、乳児期からの様子を聞き取ったり、実際に運動をさせてみたりして、専門医が総合的に判断します。
DCDは気づいてもらいにくい
同じように発達障害の一分類であるASD、LD、ADHDと違って、DCDは認知度がかなり低いです。それはDCDの特性に起因すると考えられます。
DCDは、他の発達障害と併存する可能性も高いことがわかっています。そのため、他の発達障害とDCDを併せもつ場合、ASD、LD、ADHDを主な症状と捉え、DCDを積極的に治療しようということにはなりにくいのです。
そのような理由もあってか、DCDは発達障害者支援法において、発達障害の一つとして独立して取り上げられてはいません。ASD、LD、ADHDに続き「その他これに類する脳機能の障害」と表記されるものの一つという位置づけです。
これらの理由から、医療に携わる方の間ですらDCDの認知度は低いのです。数年前までは、発達の専門医ですら、DCDという診断名を知らない先生がほとんどでした。
保育士や教員であっても、DCDと聞いて、どんな障害なのかきちんと把握している人はまだまだ少ないのが現状です。
DCDは単なる「不器用」や「運動音痴」としてとらえられ、それが障害であるとは気づいてもらえないことが多いのです。
専門医に相談|セカンドオピニオンも視野に
上記に示した通り、DCDは診断が非常に難しいです。
なので、専門の医療機関にかかることが非常に重要になってきます。
もし、最初にかかった病院で「心配ありません」と言われた場合でも、その説明に納得いかないという場合には、別の医療機関にかかることも考えてみましょう。
多くの方にこの障害を知ってもらい、困っている子が適切な支援を受けられるようになってほしいと思います。
まずは、親御さんが気づいてあげられることが大切かもしれませんね。
リハビリや支援を行い、本人のやる気や生活をサポート
DCDのあるお子さんは、周囲から「本気でやっていない」「怠けている」「練習が足りない」と思われがちです。
しかし実際は、誰よりも努力し、真剣に向き合っていることが多いです。
人並にできる人から見ると「どうして、そうなるの?」と疑問に思う場面に出くわすこともあるかもしれません。感覚の違いが垣間見えたときこそ、「わが子を知るチャンスだ!」という意気込みで、お子さんの世界を理解するように努めてください。
適宜リハビリや支援を行っていくことで、成長に伴い不器用さが目立たなくなることもあります。一番身近な大人である親御さんの姿勢に、お子さんは敏感です。「困っていたらサポートしてくれる人がいる」という安心感は、お子さんにとって心強いものとなるでしょう。
そもそもDCDにリハビリや支援をすべきなの?
DCDにリハビリや支援は必要です。
そもそも「うまく字を書けない」「字を書くのが遅い」「スキップできない」といったことにリハビリや支援は必要なの?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、DCDをもつ本人にとっては大きな意味をもちます。なぜなら、本人のQOL(Quality Of Life:人生、生活の質)に関わるからです。
運動が苦手、字が下手、不器用だという症状は、学力などと比べて他の子との差が子供の目にも明確にわかりやすいです。
不器用さや運動の苦手さを友達に馬鹿にされたり、「他の子と比べて自分は…」と劣等感を抱いてしまったりするということ(二次障害)が起きやすくなります。
このようなことを防いだり、軽減するためにも、DCDの症状にリハビリや支援は必要なのです。
また、他の発達障害とDCDを併存していると、他の発達障害の方にばかり注目してしまいがちですが、DCDを治療することで、併存する発達障害にも良い影響があるのです。
DCDは早期治療が功を奏します。
ぜひ、お子さんが小さいうちにリハビリや支援を受けられるように、ご家族で考えてみてください。
DCDへのリハビリや支援
DCDへのリハビリテーションや支援では、3通りの方法を組み合わせて行います。
- 基礎的な身体能力を向上させるリハビリ
- 「できるようになりたい」と本人が思うもののトレーニング
- ツールの活用
これらは、専門医や作業療法士がお子さんの能力を元にコーディネートし、お子さん本人やご家族と話し合った上で考案していきます。
①基礎的な身体能力を向上させるリハビリ
サーキット(平均台やボールプールなどの色々な遊具を組み合わせたもの)や体操、作業療法などで、協調運動の基礎的な力を向上させます。
お子さんの苦手な分野がどんなことなのか、ということに合わせて内容をコーディネートします。
②「できるようになりたい」と本人が思うもののトレーニング
今は苦手だけど、本人が「できるようになりたい」と願うことを主眼においたトレーニングです。
周囲が「もっと字を速く書けるようになった方が…」と思っていたとしても、本人が「ボールを遠くまで投げられるようになりたい」と願うなら、ボールの遠投を目指すトレーニングをするということになります。
リハビリやトレーニングを実際に受けるのは、お子さん本人です。
本人のやる気を持続させたり、達成感を味わわせることにつながります。
③ツールの活用
ツールを活用することも取り入れます。
お子さんの協調運動の能力によっては、トレーニングをしても、能力の向上を目指すのが難しかったり、時間がかかるものもあります。
そんな時は、そのトレーニングに時間をかけるよりも、便利な道具を活用することで能力を補えるなら、道具の活用も取り入れていきます。
▼DCDの診断から支援まで網羅的に紹介した動画になりますので、参考にしてみてください。
【注意!】反復練習は逆効果
トレーニングが効果的だと知り、一番に思い浮かべるのは「反復練習」なのではないでしょうか。ですが、反復練習は逆効果の場合もあるのでご注意ください!
「自分は反復練習でできるようになったけど??」と頭に「?」が浮かぶかもしれません。しかし、発達障害のあるお子さんの場合、定型発達のお子さんと身体の動かし方・感覚の捉え方が異なります。
そもそも、人にはそれぞれ個性があるので、皆が同じトレーニング方法で上手くいくことはありません。つまり、自分ができた方法がそのまま、お子さんに当てはまるとは限らないということです。
無理やり反復練習を続けさせていると、その作業自体に苦痛を感じたり、劣等感を増幅させる結果にもなりかねません。
それよりも特性に合わせたトレーニングを考えた方が、お子さんも親御さんも負担が少ないですよ。親子で楽しめるトレーニングが見つかると良いですね♪
家庭で取り入れたいトレーニングやツール
ここでは、ご家庭で取り組めることやツールをご紹介しますので、お子さんに合ったものを、ぜひ取り入れてみてください。
家庭で取り入れたいトレーニング
▼家庭でも取り入れやすいトレーニングについて紹介しています。
▼遊びとして取り入れやすい、多くのトレーニングについて紹介されています。
オススメのツール
ここでは、お子さんのトレーニングや書字に困難がある場合に便利なツールを、いくつかご紹介します。
▼バランスボールは、トレーニングでよく取り入れられていますが、こちらは取っ手があるので、バランスをとることに苦手や恐怖を感じているお子さんにピッタリです。
(4400円/楽天市場/2021.10.28)
▼鉛筆の持ち方を整えるグリップですが、指をきちんとホールドしてくれるので、書字に困難のあるお子さんの手助けになるかもしれません。
(1782円/楽天市場/2021.10.28)
▼書字に困難のある場合に、お子さんに合った書き方プリントを作成できるホームページもあります。
「かきかたプリントメーカー」自体は無料で使用できます。ダウンロードに必要な通信環境と、プリントアウトの代金は必要です。
お子さんご本人の「できた!」「これなら、いつもより良いかも」を目指すことが一番大切なんです。
まとめ
- DCDとは、脳機能に障害があり、身体をうまく動かすことのできない障害で、乳幼児期から症状の出ているもの。
- 症状は、身体を動かすこと全般に出る可能性があり、成長によって緩和されていくものもあるが、残存する場合も多い。
- DCDは認知度が低く、教育機関でも気づいてもらいにくいので、気になった場合は発達専門の医療機関にかかるべき。
- 子どものQOLに関わる障害なので、幼児期から適切なリハビリやトレーニング、ツールの活用をすることが必要。
DCDは、まだまだ認知度が低いのが現状。
しかし、この障害はお子さんのQOLに大きくかかわるものなので、できる限り早期に発見し、適切な支援をすることが大切です。
気になった場合は、ぜひ発達専門の医療機関にかかってくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。