皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!今回のテーマは「暴力的な子」についてです。
暴力的な子の親御さんの中には次のように楽観している場合が多くあります。
- そのうち良くなる
- 小さなうちはみんなこんなものだ
もちろん、間違いではないですが、放っておいて解決することばかりでもありません。早期に対応しなければ、問題が深刻化したり、他の問題に発展してしまうこともあるのです!
お子さんが暴力的で心配な時は原因を探り、適切な対応をしていきましょう。
目次
暴力的な子が暴力を振るってしまう理由を解説!
一言で「暴力的な子」と言っても、原因は様々です。
なぜ暴力的な行為に出てしまうのか、原因が分かっていると、効果的な対応ができます。
一人一人に適した対応をするためにも、なぜ暴力的な行為に出てしまうのか、まずはお子さんの年齢別に原因を探っていきましょう。
3~6歳
この年代のお子さんで、よく暴力を振るってしまうのは、発達途上であることが原因の場合が多いです。
発達の途上であることで、大きく分けて以下3つのことが起きています。
①脳の未発達により、状況を読み取れない
②経験不足により、状況に沿った行動がわからない
③脳の未発達により、言語化できない
ポイント①:状況を読み取れない
脳の視覚と聴覚を司る部分が未発達であると、周囲の状況を正確に読み取ることが難しくなります。
これは、見えていない・聞こえていないということではなく、見えている・聞こえているけれど、その情報を脳が正確に処理できていないということです。
すると、先生の注意がきちんと伝わらなかったり、友達の表情を読み取ったりすることができず、その場の状況をつかむことができません。
周囲で何がおこっているのかわからないので、パニックになったり、どうしたらよいかわからなくなったりして、結果、手を出してしまうことがあります。
ポイント②:状況に沿った行動がわからない
必要な習慣や考え方が形成されていない状態を指します。認知行動療法の考え方においては、「未学習」と言います。
経験が不足していることにより、困ったことが起きた時に、どのような態度をとれば良いのかわからず、癇癪を起こしたり、暴力を振るってしまったりするのです。
ポイント③:言語化できない
脳の言語を司る部分が未発達であったり、語彙が足りなかったりすると、自分の気持ちを上手く言葉にできません。言いたいことが相手に伝わらないもどかしさから、癇癪を起こしたり、手が出てしまったりします。
3〜6歳頃までのお子さんは、脳が未発達であったり、経験不足であったりすることから、暴力的な行為に出てしまうことは珍しくありません。
癇癪を起こしたり、手が出てしまったりすることが多かったとしても、「暴力的な性格の子」というわけではなく、誰しもが通過する過程とも言えるでしょう。
この年代のお子さんに効果的な対応を後述しますので、まずは親御さんがそのような対応をしつつ、様子を見ることをオススメします。発達途上であることが原因ならば、成長するにつれ、必ず事態は改善していきます。
小学校以降
小学校入学以降も暴力的な態度が継続しているようであれば、しっかりと対策を講じていかなければなりません。
なぜなら、発達途上であることが原因であるとは考えにくく、成長とともに問題が深刻化していく可能性があるからです。
では、小学校入学以降の子供の暴力的な態度が継続してしまう原因は、どんなものがあるのでしょうか。一言で「暴力的な子」と言っても、「暴力的」という言葉が指す様子は人によって違うでしょう。
まずは、大きく分けて下記の2つのタイプのどちらに当てはまるか見ます。
①思い通りにならずにパニックになり暴れてしまい周囲が困っている
②友達や兄弟を思い通りにコントロールするため暴力を振るう
①のタイプの子供は、発達障害が原因である可能性があります。いわゆる「キレる」という状態は、子供なら時々はある子も少なくありません。
そして、子供が②のような態度をとってしまう原因は、親御さんの接し方の問題や、間違った行動を学習して正されてこなかった、ということが考えられます。
発達障害
発達障害は、脳機能の一部に障害があることで生じます。
脳の機能に障害があることで、発達途上の子供のように、状況を読み取れなかったり、言語化できなかったりして、暴力的な行為に出てしまうことがあるのです。
しかし、発達途上の小さな子供とは違い、それが自然に改善していく可能性は低く、そうなったとしても時間がかかります。
また、高機能自閉症などの広汎性発達障害では、パニックを起こしてしまうと、暴れて手が付けられなくなってしまうことも少なくありません。
発達障害が原因の場合は、暴力的な態度をとってしまうこと以外にも、生活する上で困っていることがあるはずです。
日常の困り感が他にもあるかどうか、どのようなことなのか、という事も判断基準となるでしょう。
親の接し方
親御さんの接し方が、子供をコントロールしようとするものであるほど、子供は暴力的な行為に出てしまいやすくなります。いわゆる、『過干渉』と言われる状態です。
親御さんが子供の行動をコントロールしようとし過ぎると、子供も友達や兄弟を無理やりコントロールしようとする傾向が見られます。
▼ご自身のお子さんへの接し方に不安を感じられた方は、こちらの動画をご参照ください。
間違った行動を学習してしまっている
認知行動療法の考え方においては、誤学習と言います。
誤学習とは、状況にそぐわない態度などを学習してしまっている状態です。
例えば、次のようなものです。
B君と遊びたいのだが、うまく声をかけられず、B君を叩いてしまった。
↓
B君は追いかけてきてくれた。
↓
友達と遊びたい時は、気を引くためにその子を叩けばいいのか!
認知行動療法では、行動は学習したことによって為されると考えます。
この例の場合、本当はB君は怒ってA君を追いかけてきているのですが、A君としては、遊びたいという欲求が満たされてしまったので、「友達と遊びたい時は、その子を叩けばいい」と間違った学習をしてしまっているのです。
このような誤学習の状態は、その後の経験によって、更新され、正されていくことが多いものです。
しかし、身近な大人から正されることなく成長してしまった場合、このような状態が継続されてしまうことも考えられます。
発達障害や、親の過干渉が原因でないと考えられる場合は、この誤学習の状態が継続してしまっている可能性があります。
暴力的な子にはどんな対応をすればいい?
暴力的な行動に出てしまうお子さんに「これをすれば大丈夫!」といった対応方法は残念ながらありません。なぜなら、暴力的になってしまう原因も、その子の生活環境も一人一人違うからです。
以下に、短期的・長期的な視点に分けて対応をいくつかご紹介しますので、お子さんに合っていると思う、または取り組みやすいことから、ぜひやってみてください。
短期的な対応
暴力的な行動に出てしまったその時にすべきことや、暴力的な行動に出ないように予防するための方法です。
①癇癪やパニックをおこしている時は、本人が落ち着くまで待つ
②正しい行動を教える
③環境を整備する
短期的な対応①:癇癪やパニックの最中は待つ
癇癪やパニックを起こしている最中は、誰が何を言っても、聞く耳をもたないことが多いので、本人が落ち着くのを待ちます。
友達や兄弟など、暴力を振るってしまいそうな相手がいれば遠ざけることだけはして、後は本人の様子を見つつも、そっとしておくのがベストです。
できるならば、本人が落ち着くための部屋や、コーナー(小さな子の場合、家の中ならば子供用テントなどでも可!)があると、より一層効果的。
落ち着いたら、なぜ癇癪を起こしてしまったのか、本当はどうすべきだったのかを振り返りましょう。このような方法は、小学校入学前のお子さんや、発達障害の可能性のあるお子さんに有効です。
▼お子さんがパニックをおこしている時の対応方法
短期的な対応②:正しい行動を教える
この方法は、全てのタイプのお子さんに効果があると思います。暴力で人をコントロールしようとしている時に用いる手段です。
例えば、友達が使っているおもちゃを貸してほしくて友達を叩いてしまった時。このような時は、自分の思いを伝えるための正しい方法を教えましょう。「おもちゃを貸して欲しい時は、貸してって言うんだよ」といったことです。
この行為によって、おもちゃを貸してもらうことに成功したり、親御さんに褒められたりする体験を重ねていくことができれば、正しい行為を学習できます。
ただ、小学校入学以降のお子さんの場合は、上記よりも複雑な対人場面が想定されると思います。
また、学校での問題行動となると、親御さんが改善するのは難しくなるでしょう。そんな場合は、ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)をオススメします。(SSTについては後述します)
短期的な対応③:環境整備
この方法は、小学校入学前のお子さんや発達障害の可能性のあるお子さんに有効な手立てです。そもそもパニックや癇癪を起こさせないように、環境を整備するという方法です。
ここで言う環境とは、友達などの周囲の人、教室の照明や時間割りなど、本人以外の全てのものを指します。
パニックを起こす体験が本人にとって必要な場合もありますが、環境を整備することで暴力的な行為に出てしまうことを回避できるのであれば、そうする方が良いことも多いです。
環境を整備するとは、本人がパニックを起こす要因を失くすことです。
・特定の友達と一緒に活動するとトラブルになりやすいことがわかっていれば、なるべく同じ班にはしない
・予定変更はないようにする。変更がありそうな時は、どのように変更する可能性があるかを本人に予め話しておく
環境整備をするためには、その子が何をきっかけに暴力的な行為に出てしまうのかを観察してつかみましょう。そのきっかけを排除すれば、キレたり、パニックをおこしたりすることは減るはずです。
▼癇癪を起させない方法
長期的な対応
前述したような、その場でできる対応も大切ですが、子供はすぐには変わらないので、少しずつ暴力的な行為を減らしていくための長期的な対応も平行して行いましょう。
①問題行動を起こしていない時に話をする
②親がお手本を示す
③医療機関にかかる
④SSTを受ける
長期的な対応①:問題行動を起こしていないときに話をする
暴力的な行為を起こしている時や直後ではなく、普段の生活の中で(特にリラックスして話せる状況の時)、正しい行動について話し合うという方法です。
この方法は全てのタイプのお子さんに効果的です。小さなお子さんの場合は、絵本を読んでいる時やアニメを見ている時がチャンスです。
「この子、お友達を叩いて喧嘩になっちゃったけど、どうすればよかったんだろうね?」といった会話をもちましょう。
小学校入学以降のお子さんであれば、上記のような方法の他にも、本人自身の学校での行動を取り上げるのも良いです。
しかし、ここで一番大切なのは「お説教」にならないようにすることです。できれば、「どうすればよかったと思う?」と本人と話し合えることがベストでしょう。
長期的な対応②:親がお手本を示す
親御さんが普段からお手本を示すことはとても重要です。この方法も、全てのタイプのお子さんにとって、大変意味のあることです。
小さなお子さんの場合は、少々芝居じみていてもよいので、わかりやすく示してあげることが時には大切です。
ママ:パパ、そのゲーム、ママもやりたいから貸して!
パパ:でも、今パパがやってる最中だから嫌だな
ママ:じゃあ、パパが終わったら貸してほしいな
パパ:それならいいよ
ママ:ありがとう
このように、子供にわかりやすい言葉で、正しい行動のお手本を示しましょう。
小学校入学以降のお子さんには、上記のようなわざとらしいお手本は必要ありませんが、普段から言葉遣いや他人への接し方には注意が必要です。
子供は親の様子を本当によく見ています。もし、親御さんが自身の態度に不安があるようなら、ご自身のことも合わせて、身近な専門家に相談してみましょう。
長期的な対応③:医療機関にかかる
お子さんに発達障害の可能性があると思う場合は、医療機関にかかることも大切です。
診断がつくことを不安に感じる親御さんもいるかもしれません。
しかし、発達障害は特性があるので、診断がつけば、その子に合った対応をより深く探ることができるかもしれないのです。
また、暴力的な行為に出てしまうことが多いお子さんの場合は投薬治療も考えられます。服薬することで、気持ちの起伏が落ち着くこともあるのです。それは、医療機関にかかって初めてできる対応です。
本当にその子に合った、そして一歩踏み込んだ対応をするためにも、医療機関にかかることをためらわないでください。
医療機関にかかった方が良いのか迷う時、かかりたいと思う時は、まずは保健センターやスクールカウンセラーなど、身近な専門家に相談してみましょう。
長期的な対応④:SST
SSTは、社会的スキルを身に付けるトレーニングのことです。
発達障害の可能性のあるお子さんや、お子さんへの接し方に不安のある親御さん自身、他人への接し方を誤学習してしまっているお子さんに効果的です。
社会的スキルとは、簡単に言うと「相手への態度や言い方」です。
言葉はもちろんのこと、それだけでなく、話す速さや声の大きさ、表情、目線、身振りなど、他人への接し方全てを総合するものです。
社会的スキルを学ぶことができれば、暴力的な行為に出たり、暴れたりしなくても済むような対人スキルを学ぶことができるのです。
親御さんの場合は、お子さんに対する支配的でない接し方を学べるでしょう。SSTは精神科をはじめとした医療機関、自立訓練事業所、就労・生活支援センター、学校などで受けることができます。
SSTを受けさせたい、受けたい場合も、まずは身近な専門家に相談してみましょう。
▼詳しくはこちらもご参照ください。
子供が暴力的で悩んでいる時の相談先
お子さんが暴力的な行為に出てしまうことが多くて悩んでいるという場合は、次のような窓口に相談し、親御さんだけで抱え込まないようにしましょう。
・担任の先生
・スクールカウンセラー
・保健センター
・かかりつけ医
・児童相談所
小学校入学以降のお子さんは、まずは、担任の先生に相談できることが理想です。
学校でのお子さんの様子を一番よく知っていますし、先生も同じように悩んでいる可能性もあるからです。担任の先生と同席して、スクールカウンセラーの先生に相談するというのもアリです。
そして、前述したように、専門の医療機関にかかりたい場合やSSTを受けたいという時は、まずはスクールカウンセラーや保健センター、かかりつけ医に相談してみましょう。
医療機関にかかる場合も、SSTを受けるという時も、数回に渡って通う必要がありますので、通いやすい場所を紹介してくれるはずです。
そして、小学校入学以降のお子さんが暴力的な態度をとってしまうことが多い場合は、ぜひ児童相談所にも相談してみてください。
お子さんの暴力行為が深刻な場合、親御さんが止めに入った時に、逆にお子さんにケガをさせてしまうこともあるかもしれません。
そんな時、児童相談所は親の虐待も考えるはずです。しかし、普段からお子さんのことを児童相談所に相談していれば、状況を分かってもらいやすいです。親御さんにとって児童相談所に相談するということは、とても勇気のいることだと思います。
しかし、お子さんにとっても、親御さん自身にとっても、普段から児童相談所を身近な存在としておくことをオススメします。
よかったらこちらの記事もお読みください。
まとめ
今日の記事をまとめると次の5つです。
- お子さんが暴力的な行為をとりやすい原因は小学校入学前後で考える
- 小学校入学前であれば対応しつつ様子見
- 小学校入学以降も続くようであれば発達障害や親御さんの接し方の問題・誤学習状態の継続が原因
- 暴力的な子への対応は『短期的なもの』と『長期的なもの』がある
- 子供が暴力的で悩んだらまずは担任の先生をはじめとした身近な専門家に相談を
暴力的な態度をとってしまう原因はお子さん一人一人違います。なので、「これをすれば大丈夫!」と言えるような対応はありません。
短期的、長期的な視点で、お子さんに合った対応を試行錯誤していく必要があります。そんな時は親御さんだけで抱え込まないでくださいね。