皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!今回のキーワードは「発達障害 脳」についてです。

発達障害について調べると、「の発達の凸凹によるもの」という説明が多々されていることと思います。

脳の発達に原因があることは分かっていても、そのメカニズムはほとんど解明されていません。

ですが、様々な研究によって少しずついろいろなことがわかってきています。

今回は、少し踏み込んで、研究によってどのようなことがわかっているかまとめてみました。

少しでもお役に立てれば幸いです。

発達障害と脳の発達

発達障害は、最初にも述べた通り、脳の発達に原因があります。

発達障害は生まれつきの脳の機能の違いによるもの

厚生労働省の定義によれば、発達障害は以下のようなものです。

「発達障害」とは生まれつきの特性です発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれます。これらは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています。同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害を併せ持ったりすることもあります。

引用:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス

症状は様々ですが、共通しているのは生まれつきの脳の機能が、発達障害のない人と違っているというところです。

しつけや育て方の問題なのではないか、と悩む方もいらっしゃるかもしれませんが、生まれ持ったものなのです。

そのため、完全に治る、ということはないと言われています。

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橋口
その人の生まれ持った特性は、治すことができないですよね。
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都築
ですが、環境を変えたり、必要な支援をしたりすることで困ることを減らすことはできます

発達障害の特徴については、以下の記事でわかりやすくまとめられています。
よろしければご覧ください。

原因はほとんどわかっていない

これも冒頭に述べた通り、研究はされていても、ほとんど原因やメカニズムは解明されていません

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橋口
発達障害ということば自体、比較的新しいものですからね。
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都築
ですが、研究されていないわけではありません。
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橋口
研究によってわかってきていることもあります

これからさらに研究が進んで、少しでも多くのことがわかって、効果的な治療法や支援方法などが見つかることが期待されています。

自閉スペクトラム症と脳の関係

ここでは、自閉スペクトラム症(ASD)に関係する脳の部位や機能についてみていきましょう。

自閉スペクトラム症に関係する脳の部位

自閉スペクトラム症に関わる脳の部位としてわかっているのは、「内側前頭前野」「縫線核」という部分です。

簡単な図で説明すると、以下のような場所になります。

参照:自閉症スペクトラム障害に脳の特定領域の活動不全が関与―対人コミュニケーションの障害に特徴的な認知パターンを実証―発達期のセロトニンが自閉症に重要-脳内セロトニンを回復させることで症状が改善-

内側前頭前野

一つ目は、「内側前頭前野」という部位の活動が発達障害のない人よりも弱い、ということがわかっています。

内側前頭前野とは?

大脳の前頭葉という部分の一番前にある「前頭前野」と呼ばれる部分の中の、左右の脳が接する場所のこと。

渡部、山末(2012)によれば、この「内側前頭前野」の活動が弱いと、顔や声の表情よりも、ことばの内容を重視するようになる、とのことです。

これは、「笑顔」で「すごいね」と言った場合と「きたないね」と言った場合、そして「嫌悪感を表した表情」で「すばらしいね」と言った場合と「ひどいね」と言った場合に、それぞれを友好的だと感じるか、敵対的に感じるか、という実験をした結果です。

参照:自閉症スペクトラム障害に脳の特定領域の活動不全が関与―対人コミュニケーションの障害に特徴的な認知パターンを実証―

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小野田
つまり、自閉症スペクトラム障害のある人は、「嫌悪感を表した表情」で「すばらしいね」と言った場合を敵対的だと感じることが、発達障害のない人よりも少なかった、という結果が出たわけです。

また、内側前頭前野の活動が弱いほど、コミュニケーションにおける障害が重い、ということもこの実験からわかりました。

参考文献:自閉症スペクトラム障害に脳の特定領域の活動不全が関与―対人コミュニケーションの障害に特徴的な認知パターンを実証―

オキシトシンというホルモン

浜松医科大学の山末らは、「オキシトシン」というホルモン投与すると、「内側前頭前野」の活動が活発化する、ということを明らかにしました。

オキシトシンとは?

他人への信頼感を高める効果のあるホルモンのこと。

これによって、ことばの内容よりも、表情や口調から相手の感情を読み取ることが多くなったといいます。

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小野田
ですが、オキシトシンは、女性の子宮を収縮させる機能もあるため、この実験に女性は参加していません

有効性と安全性が確認されたら、女性やお子さんにも使えるかを検討したいとも述べています。

この研究についての詳細を、研究を行った一人である浜松医科大学の山末教授が説明した動画がありました。
興味を持たれた方はぜひご覧ください。

参考文献:発達障害「自閉スペクトラム症」解明進む…セロトニン減少、発症に関与か

縫線核とセロトニン

理化学研究所の内匠ら(2017)は、マウスを使った実験で、脳幹にある「縫線核」という部分の働きが低下することで、「セロトニン」という物質の量が減ると、マウスにも自閉症に似た特徴が現れることを明らかにしました。

具体的に言うと、「鳴き声によって母親と意思疎通をするのが苦手」などの特徴です。

セロトニンとは?

不安な気持ちを落ち着かせたりする作用がある神経伝達物質。
脳の発達の他にも、睡眠のリズムや情動の調節などさまざまな働きをする。

また、乳幼児期のマウスに「セロトニン」を投与すると、自閉症に似た特徴が改善したということも明らかにしています。

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都築
でも、なんでマウスなんですか?
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小野田
マウスはヒトとゲノム情報、つまり遺伝子情報が似ているので、生物学的な脳の発達のしくみが共通していると考えられているからです。

また、日本脳科学関連学会連合によれば、自閉症の人たちの一部では、「セロトニン」を作ったり、「セロトニン」を細胞に取り込む機能に異常があったりすることも分かったといいます。

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小野田
ただし、これについては全員に当てはまるわけではない、という点に注意が必要です。
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都築
まだまだ研究が必要ということですね。

参考文献:発達障害「自閉スペクトラム症」解明進む…セロトニン減少、発症に関与か発達期のセロトニンが自閉症に重要-脳内セロトニンを回復させることで症状が改善-日本脳科学関連学会連合「自閉症とセロトニン」

注意欠陥多動性障害と脳の関わり

ここでは、注意欠陥多動性障害(ADHD)に関係する脳の部位や機能についてみていきましょう。

眼窩前頭皮質

注意欠陥多動性障害に関わる脳の部位としてわかっているのは、「前頭葉」の中の「眼窩前頭皮質」という部分です。

簡単な図で説明すると、以下のような場所になります。

参照:ADHDの脳構造の特徴を人工知能により解明し、遺伝子多型の影響を発見

福井大学(2018)の研究によれば、「前頭葉」の中の「眼窩前頭皮質」という部位が注意欠陥多動性障害の発症に関係しているということを明らかにしました。

また、この「眼窩前頭皮質」の厚みや面積などが、作業記憶、つまりワーキングメモリーというものが少ないことと関係があるということも突き止めました。

ワーキングメモリーとは

何か物事を成し遂げようとしたり、そのために必要なことを考えたりするときに使う記憶のこと。

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小野田
この実験にはMRIが使われました。今後は、MRI撮影によってADHDの診断ができる、というところまで応用できるように研究していきたいという目標を持っていると書かれていました。

参考文献:ADHDの脳構造の特徴を人工知能により解明し、遺伝子多型の影響を発見

学習障害と脳の関わり

ここでは、学習障害(LD)に関係する脳の部位や機能についてみていきましょう。

軸索と髄鞘

加藤ら(2019)は、学習障害には、脳を構成している「ニューロン」という神経細胞の機能が関わっているということを明らかにしました。

参照:学習障害を引き起こす髄鞘機能障害の神経回路活動を解明

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小野田
この実験も、マウスを使ったものです。

この実験では、マウスが右の前足を使って一定の時間の間レバーを引くと、水がもらえるということを学習できるか、ということを調べました。

その結果、ニューロンの中の「軸索」という部分を取り巻く「髄鞘」というものの機能に障害があることが、学習障害の原因になるということがわかりました。

具体的に言うと、「視床」と「運動野」をつなぐ「軸索」が電気信号を伝達する時間が長くなり、さらに、それぞれの「軸索」での情報伝達が不規則に行われることが原因だとのことです。

視床とは

間脳と呼ばれる部分にある、嗅覚以外が大脳に伝達されるときに中継点になる場所。
痛みや運動の感覚を調節したり、感情に関係したりする。

運動野とは

大脳皮質の、筋肉に運動の命令を出す部位のこと。

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小野田
簡単に言えば、脳を構成する細胞であるニューロンの一部の障害が学習障害につながる、ということです。

参考文献:学習障害を引き起こす髄鞘機能障害の神経回路活動を解明

まとめ

今回は、発達障害と脳の関係についてまとめました。
ポイントは、

  • 発達障害の原因はほとんど解明されていないが、研究はしっかりとされている
  • 自閉症スペクトラム障害には、「内側前頭前野」「縫線核」という部位が関係していることがわかっている
  • 注意欠陥多動性障害には、「前頭葉」の中の「眼窩前頭皮質」という部位が関係していることがわかっている
  • 学習障害は、ニューロンの一部である「髄鞘」という部分に障害があることが原因であることがわかっている

ということです。

今回ご紹介したのは、研究のごく一部です。
研究は少しずつですが、確かに進んでいます。
今後、もっと研究が進んで、新しい治療法や治療薬が開発されることを期待しましょう。

ここまでお読みいただきありがとうございました。