皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!今回のキーワードは「発達障害略語」についてです。
発達障害の略語って、けっこうありますよね。知っている人にとっては便利な略語ですが、慣れないうちは戸惑ってしまう方も多いはず。
この記事では、発達障害の略語をすべて紹介します。発達障害の診断基準となる、DSM-5の神経発達症群ごとに並べてあります。
よく見る略語から、たまにしか見ない略語まであると思います。わからない略語が出てきた時、パッと開けるページを保存しておくと情報収集がはかどりますよ!
目次
発達障害の略語一覧
ここでは、発達障害を障害群に分けて、略語を紹介します。
知的能力障害群 (ID)
知的能力障害群(ID:Intellectual Disability)は、知的な発達障害のことです。一般に「知的障害」とも言われます。
以前は、IQと呼ばれる知的水準を数値化したもので、重症度を決めていました。
しかし現在は、「この人はどの程度困っているのか」といった、適応機能別によって、重症度を判断するようになりました。医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じように使われています。
▼知的障害についてはこちらの記事でも取り扱っています。
コミュニケーション障害群(CD)
コミュニケーション障害(CD:Communication Disorder)は、言語や会話、コミュニケーションの障害のことです。言葉の遅れがあったり、上手に言葉を発することが出来ない場合など、コミュニケーション全般の難しさがあります。
実は、「CD」という略語には、「素行症/素行障害 (Conduct Disorder) 」の意味もあります。
素行症/素行障害もDMS-5に載っていますが、全く別の精神疾患です。
「CD」という記載は素行症を指して使われることが多いようです。インターネット上でみられる場合も「コミュニケーション障害群」は略語を使わずに記載されていることが多い印象です。
どちらを指して略語が使われているのかは、文脈でしか判断できません。複数の意味があることは知っておきたいですね。
▼コミュニケーション障害群でなくても、コミュニケーションに悩みがある方も多いのではないでしょうか。よろしければこちらの記事も参考にしてください。
言語症(LD)
言語症(LD:Language Disorder)は、以前は、言語遅滞と呼ばれていました。「知的な能力の遅れはないのに、言葉の遅れだけがある」という方の概念です。言葉の遅れとは、以下のことに困難さがあります。
- 語彙が少ない
- 文法をうまく使いこなせない
- 文章をうまく繋げて表現できない
言葉の遅れを検査する代表的な言語検査に、ITPA言語学習能力診断検査、国リハ式<S-S>法言語発達遅滞検査などがあります。
都築さんと同じ感想を持った方は、もう少し先の「限局性学習症」の項目を読めばすっきりするかもしれません!
語音症(SSD)
語音症(SSD:Speech Sound Disorder)とは、いわゆる構音障害です。正しく発音することに難しさがあります。
例えば、「がっこう」を「だっこう」と発してしまう、などです。語音症は、言語聴覚士の指導のもとトレーニングをすれば、良くなる場合もあります。
小児期発症流暢症(COFD)
小児期発症流暢症(COFD:Childhood-Onset Fluency Disorder)とは、吃音のことです。「あ、あ、あ、ありがとうございます。」と言葉を発する時に詰まったり、どもったりする場合が多いです。
この症状自体は、年齢を重ねても症状が続くケースがあります。その為、症状があっても周囲は注意を伝えることは控えめにします。本人が、話をすることを楽しみ、抵抗感を持たないような環境づくりも大切です。
▼吃音についてご紹介した記事もありますよ!
社会的コミュニケーション症(SCD)
社会的コミュニケーション症(SCD:Social Communication Disordr)は、全般的なコミュニケーションに対する難しさがあります。
- 挨拶など他者との社会生活に必要なコミュニケーションの難しさ
- 状況に応じてコミュニケーションのやり方を柔軟に変えることの難しさ
- 相槌をうつ
- あいまいな言葉を理解することの難しさ
症状の表れかたは、自閉スペクトラム症の方と似ています。
コミュニケーション症に特徴的な症状がありながらも、診断基準を満たさない人、または、十分な診断をを行えるほどの情報が無い場合に、特定不能のコミュニケーション症(UCD:Unspecified Communication Disorder)とつけることがあります。
自閉スペクトラム症 (ASD)
自閉スペクトラム症 (ASD:Autism Spectrum Disorder)は、社会的コミュニケーションの障害と、限定された反復的な行動様式を持った発達障害の1つです。以前は、
- 自閉性障害(AD:Autistic Disorder)
- アスペルガー障害(AD:Asperger Disorder)
- 特定不能の広汎性発達障害(PDDNOS:Pervasive Developmental Disorder – Not Otherwise Specified))
- 小児期崩壊性障害(CDD :childhood disintegrative disorder)
などの分け方をしていました。ただ、環境や療育などの状況により、変化が大きいため、現在は、スペクトラム(連続体)としてまとめて捉えるようになっています。
▼ASDについての解説も過去にしています。もっと知りたい方はご覧ください。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
注意欠如・多動性障害(ADHD:Attention-deficit / Hyperactivity disorder)は、「不注意」と「多動性―衝動性」の2つが大きな症状です。
「不注意」としては、気が散りやすかったり、忘れ物が多いなどがあります。「多動性―衝動性」では、常に身体がそわそわしたり、順番を待つことが出来ないといった行動が見られます。
その為、先生や親から繰り返し注意をされてしまうことへ繋がりやすく、本人が自信を持ちづらくなるといった2次障害もあります。症状を抑える為に、コンサータやストラテラといった薬を使用した治療を行います。
また、診断基準は満たさないものの、ADHDに特徴的な症状があり、症状による障害が存在すると認められる場合に、他の特定される注意欠如・多動性障害(OSADHD:Other Specified Attention-deficit / Hyperactivity disorder)や、特定不能の注意欠如・多動性障害(UADHD:Unspecified Attention-deficit / Hyperactivity disorder)などと診断され、薬物療法を行う場合もあります。
▼ADHDについて詳しく知りたい方は、以下の記事もお読みください。発達障害全般について解説した記事ですが、ADHDの詳細もご紹介しています。
限局性学習症(SLD)
限局性学習症(SLD:Specific Learning Disorder)とは、「読む」「書く」「計算する」ことに難しさがあります。医療現場と教育現場では、学習障害の捉え方に違いがあります。
「話をしたり聞くこと」「推論すること」など幅広く学習の障害になるものを含んだものを、教育現場では学習障害と呼んでいます。
DMS-5には「限局性学習症」と記載がありますが、日本では「学習障害」という言葉がほとんど区別なく使われます。
「学習障害」の略語として「LD」という記載を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
この「LD」という略語、実は使う人によって元となる英語が違っています!
教育的な立場:Learning Disabilities
医学的な立場:Learning Disorders
(健常児とは異なる学習アプローチをとるという点からLearning Differencesと呼ぶ人も)
以上の3通りがありますが、どれも略語としては「LD」です。面白いですね。
実際には、3つの区別をつけなくても問題となる場面はないと思います。
運動症群(MD)
運動症群(MD:Motor Disorders)は、基本的に不器用さが目立つ発達障害の1つです。
書字に障害があったり、無目的な運動行為が見られたり、わざとではないのに動きや声が出てしまうといったことにより、社会生活に支障が出てくる障害です。
発達性協調運動症(DCD)
発達性協調運動症(DCD:Developmental Coordination Disorder)の特徴は、基本的な不器用さがあります。
例えば、漢字の綴りは分かっているのですが、不器用さから字が汚いため、書字にとても時間がかかってしまいます。理学療法士による訓練などを行うこともあります。
▼発達性協調運動障害についての情報もこちらの記事でまとめています。インターネット上でも、ASD・ADHDなどに比べ情報が少ない印象なので是非参考にしてください。
常同運動症(SMD)
常同運動症(SMD:Stereotypic Movement Disorder)は、繰り返し同じ無目的な行動を行うことが特徴として見られます。ASDの方にも見られる症状ですが、常道運動症の方の場合は、自傷行動が伴います。
チック症候群(TD)
チック症候群(TD:Tic Disorders)は、自分の意志とは無関係に身体の一部がけいれんのように動いたり、その結果、音や声などが出てしまう症状です。
瞬き、顔をしかめるといった運動チックと、咳払いや規制といった音声チックがあります。ほとんどの場合、大人になると症状は無くなっていく傾向があります。
また、診断基準は満たさないものの、チック症に特徴的な症状があり、症状による障害が存在すると認められる場合に、他の特定されるチック症(OSTD:Other Specified Tic Disorder)や、特定不能のチック症(UTD:Unspecified Tic Disorder)などと診断されます。
▼チックは気になり始めると、とても気になると思います。しかし、気にしすぎない方が良いんです!詳細はこちらの記事をお読みください。
他の神経発達症群(OND)
他の神経発達症群(OND:Other Neurodevelopmental Disorders)は、これまで紹介した障害の特徴はあるものの、診断基準を満たさない場合につく診断名です。
全てがくっきりと区別できるわけではないのです。このことは想像もしやすいのではないでしょうか?
特定の症状1つだけで診断がつくことはありません。中には、複数の症状があるけれども、どの確定診断にも至らない場合もあるでしょう。
十分な情報が無い時に使われることもあります。他の特定される神経発達症(OSND:Other Specified Neurodevelopmental Disorder)や特定不能の神経発達症(UND:Unspecified Neurodevelopmental Disorder)と、つく診断名です。ASDのようなADHDといった、なんとも言えない方です。
DMS-5とは?
DSM-5の神経発達症群の順に発達障害関連の略語をご紹介してきました。
ここまで読んでいただいた方の中には、「DMS-5ってそもそも何なの?」と疑問をもっている方もいらっしゃるかもしれません。発達障害について調べていると、よく見かけるワードですよね。
DMS-5は「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」というアメリカ精神医学会が出版している本です。精神疾患の診断基準・診断分類として知られており、日本語訳も出版されています。
最後についている「5」は「第5版」の意味です。
過去5回も改訂されており、医学的にもよく使われる書籍です。DMS-5は専門家向けに出版されているものなので購入して読む必要はありません。
医師もDMS-5の基準だけで診断するわけではなく、他の情報も参考にしています。くれぐれもDMS-5を用いて自己判断しないようにしてください。
とは言え、専門書を参考にすると、説得力が増すことも確かです。ネット上の情報にも、DMS-5が紹介されていることも多いですね。
この記事では、抜け・漏れなく略語をご紹介したかったので、DMS-5に記載の順番を参考にさせていただきました。
参考動画:『ADHD』『ASD』『LD』って何の略?(発達障害・略語解説)
中野式・言語療法センターが略語の解説を動画していましたので、参考にしてくださいね。
発達障害の診断ってどこでつけられるの?
ここまで紹介した発達障害の診断名は、小児科や小児精神科の医師によって行われます。
発達障害を専門としている医師もいるのですが、多くはありません。その為、初診までに数か月待つこともあるでしょう。
相談の入り口として、地域にある、発達障害者支援センターや、療育センター、保健所などで一度相談されるのがスムーズでしょう。
病院の紹介だけでなく、療育に関する情報など発達障害の本人やご家族の方が必要とされるサービスを紹介してくれるでしょう。
また、実際に療育を行っていたり、子育てに関する様々な悩みに対しても相談に乗ってくれる場所です。診断をつけることは、支援の方向性を見つけていく手段にはなりますが、目的ではありません。
診断を受ける前から日常的に出来ることを始めてみることも大切ですし、診断後は、その子に合った場所で、適切な支援を得られることを目指しましょう。
▼いきなり病院に行くのは緊張する…。そんな方はこちらの記事も参考にしてみてください。病院以外にも、相談先はたくさんありますよ!
まとめ
いかがでしたか?知っている言葉はいくつかありましたか?
診断基準の変更などで、以前使われていた用語が使われなくなったり、今でも昔ながらの診断名(例:アスペルガー障害)を使用されることもあります。
今回紹介した略語を全て覚える必要はありません。「あれ?なんか聞いたことあるぞ?」と思ったら、またこちらの記事から探してみてください。
あなたの情報収集のお役に立てれば幸いです。