皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!     今回のキーワードは「発達障害 免許」についてです。

自動車の運転免許は18歳以上、最速で高校3年生から取得できます。                     運転は行動範囲を広げるだけでなく、通勤通学にも便利ですよね。

ところが、発達障害があると、特性から免許取得を諦めたり、免許は持っているけど運転はしたくないという方が多くいらっしゃいます。

一部の教習所では、発達障害をはじめとする、特別な支援が必要な方に向けた教習を行っています。是非ご参考下さい。

この記事では、発達障害の方の運転に対する思いや、苦手な人が多い理由、発達障害者向けの教習について解説します!

発達障害者は運転免許が取れない⁉

発達障害の方は、自動車の運転に対してどのような思いがあるのでしょうか。

Twitterで当事者の声を集めてみました。

https://twitter.com/manaaaaaa_1212/status/1448281366794162176

手足を同時に動かせない、一点に集中しすぎてしまうなどの理由から、運転に苦手意識があるようです。

一方で、「発達障害だけど運転できる」という声も挙がっています。

この方は、慎重に運転し続け、見事ゴールド免許を獲得しています。

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橋口
運転に対する認識には個人差がありそうですね。
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小野田
どちらかというと苦手に感じる人の方が多いみたいだね。  

免許取得を諦める方もいれば、ゴールド免許を獲得される方もいるように、運転の得意さは人それぞれのようです。

発達障害の方が免許を取る際に苦労する理由

発達障害の方は、免許を取るのに時間がかかったり、教習所に通い続けるのが難しい場合があります。

どの部分で躓くか、注意欠如多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)の特性別に見ていきましょう。

▼各障害については、以下の記事をご参考下さい。

ADHDの場合

注意欠如多動性障害(ADHD)の方が躓きやすいのは、以下の5点です。

ADHDのつまづきポイント

①注意力散漫で、事故に遭う確率が高い
②ハンドルやブレーキの操作が遅い
③運転の最中に不必要な行動をとる
④確認行為を忘れる
⑤教習に行く気が起きない、通学日を忘れる

どこに注意を向けるべきか分からずハッとする

ADHDは、注意の選択が難しい傾向にあります。 

目や耳に入ってくる刺激がとても気になりやすく、どこに注意を向ければよいか分からなくなるのです。

事故に繋がる一歩手前の「ヒヤリ・ハット」を体験するドライバーもいます。

  • 会話に夢中になり、注意が疎かになる
  • カーナビや同乗者の指示に慌てる
  • 歩行者や自転車の存在を見落とす
  • 信号や標識を見落とし、交通ルール違反を犯す

先の見通しが立てられずハンドルやブレーキが遅れる

ADHDの方は、時間や空間の管理能力が生まれつき低く、先を見越して行動するのが不得意です。

▼以下の記事は、発達障害の忘れ物について解説しています。

見通す力や管理能力が低いと、動作のタイミングが遅くなります。

  • ブレーキや、方向指示器を出すのが遅い
  • 前を走る車についていった結果、交差点の中や店舗の駐車場入り口付近などの停車してはいけない場所で停車する
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橋口
少しのズレが大きな事故を招くこともあります。怖いですね。

不必要な行動をする

運転中は、多方面に注意しなけなければなりません。               

衝動性が強いADHDは、「やらない方がいい」と分かっているのに、ついつい運転時に危ない行動に出ることがあります。

危険な行動の例

・眼鏡を拭く
・携帯電話の着信が無いか確認する
・周囲を確認せずに、車線を変更する
・その場で停車し、行きたい場所まで歩く

早く走りたいと思うあまり、準備を忘れる

早く発進したい気持ちが強い方は、運転する前の準備を忘れやすいです。

周囲の状況確認はもちろん、サイドブレーキの解除やミラーや座席位置の調節などは、事前に済ませておかなければ事故、または故障の原因になります。

教習所へ通う気が起きない、スケジュール調整が難しい

「ADHDは先延ばし癖がある」と聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれません。 先述した見通しを立てる力の弱さと、「今やりたい!」という思いを優先する衝動性が理由として挙げられます。

教習所に通い始めてもモチベーションが上がらず、通ったり通わなかったりを繰り返しがちになります。

もしくは、通所スケジュールの作成が困難かもしれません。

予定が増えれば増えるほど管理能力も要求されますが、時間管理が苦手な方は、うっかり教習や送迎の予約を取り忘れてしまうこともあります。

教習の期限は「最初に学科を受けた日から9ヶ月」と決まっているので、それまでに全部の教習を受講しなければ、退校処分となり、教習が最初からやり直しに戻ります。

ASDの場合

自閉症スペクトラム(ASD)の方が運転免許を取得するまでに苦労しやすい部分は、以下の3点です。

ASDのつまづきポイント

①手足が上手く動かせない為、技能科目で苦戦する
②ハンドルとペダルと目視を同時にできない
③他の生徒の視線が気になり、学科科目の授業に参加しづらい

ASDと併存しやすい発達性協調運動障害(DCD)

発達性協調運動障害(DCD)は、身体に障害がないにもかかわらず、小さい時から日常生活に支障が出るくらい不器用という、発達障害の一種です。

▼こちらの記事も参考にして下さい。

DCDは、ASDと併存しやすく、ASDの特徴としても「不器用さ」が挙げられます。

この特性が原因で、実際に自動車を運転する技能教習では、ハンドル操作が早すぎたり、逆に遅すぎたりします。急ブレーキをかけてしまう人もいます。

運転=目と手を足を同時に動かすマルチタスク

自動車を運転する時には、「認知力・判断力・操作力」の3つの能力が必要です。

認知力…道路状況、標識、歩行者、障害物などを瞬時に判断する力

判断力…認知した情報を基に危険を予測し、速度などを調整する力

操作力…判断した内容をハンドルやブレーキを使って実際に操作する力

運転は目や耳で状況を確認し、瞬時に判断を下し、手足を使って実行を繰り返しているのです。                                         つまり、運転はASDが苦手なマルチタスクを必要とします。 

ASDの方は、全体を把握することが困難であり、細部にしか注意を向けなかったり、視野を広げても細かい危険に気づきにくかったりする傾向があります。                           

人の目線や関わりを避け、学科の教習を受けない

ASDは、言外の意味を察するのが苦手だったり、人の感情を理解するのが難しかったりと、コミュニケーションに困難を抱える方が多いです。

この特性が周囲に理解されず、学生時代にいじめなどの対人トラブルを経験した結果、ますます他人を避けるようになります。

▼空気が読めない発達障害の子どもについては、以下の記事もご参考下さい。

その結果、人の視線や話し声が気になって学科の授業に集中できない、いじめっ子に似ている人と教習を受けたくないと思い、教習を休みがちになる方もいます。

学習障害(LD)の場合

学習障害(LD)は、識字障害(読みが苦手)、書字表出障害(書きが苦手)、算数障害(算数や推論が苦手)の3つに分類されます。

この中で、免許取得の弊害となりやすいのが、識字障害です。

識字障害の方は、目から入ってくる情報の認知が苦手な人がいます。         文字が歪む、揺らぐ、左右逆さ、かすむ…といったような見え方になり、文章を読むのに困難を抱えます。

学科試験の制限時間は、受験者の数によって変わることもありますが、おおよそ50分程度です。                                       免許を取得するには、〇×形式の問題×90問(1問1点)、イラスト形式の危険予測問題×5問(1問2点)を解き、90%以上の正答率を出さなければいけません。

つまり、文章を速く読み、問題の意味を理解する力が求められ、識字障害の人はかなり不利になりやすいです。

【解決方法】特性に配慮した教習を受けよう!

発達障害のある方々は、様々な特性を理由に免許取得を諦めたり、取得しても運転しなかったりと、車の運転を避ける方が多く見られます。

しかし、発達障害がある方に対応した教習を行っている教習所は各地に存在します!

今回は、発達障害者向けの教習プランである「つばさプラン」と、合宿免許の「Mランド益田校」について紹介します。

発達障害者向けの教習プラン「つばさプラン」

つばさプランとは、発達障害のある方や、軽度知的障害のある方など、自動車教習に不安がある方のサポートをしながら運転免許の取得を目指すプランです。

診断書、手帳が無くても利用可能です。

つばさプランは、2015年から栃木県の「鹿沼自動車教習所」からスタートし、2021年時点で6校の実施校と、2校のパイロット事業(試験事業実施校)を全国に展開していますので、お近くの教習所で受講可能です。

残念ながら大阪府内に実施校はありませんが、関西圏では、滋賀県の「月の輪自動車教習所」が実施しています。

つばさプランの支援内容は、以下のようになります。

つばさプランの特色4選

①事前調査(本人、保護者、コーディネーターとの事前面談、WAIS‐Ⅲ、適性検査、独自アセスメントツール『TPA』)に基づいた教習計画の作成
②専門的支援を行う「コーディネーター」の配置
③サポートチームの編成
④メンタルサポート

教習生一人ひとりに合った教習を受けられる

つばさプランでは、個人の能力や特性に合わせた教習プランを作成します。

以下が作成の流れです。

  1. 本人、家族、職員2名と面談する
  2. 本試験を受験する県、または地域の免許センターで「運転適性相談」を受ける
  3. TPA(つばさプランアセスメント)※を使い、学習面、生活面、精神面の配慮点を調べる
  4. 調査をもとに個別支援計画を立てる

※TPAとは、鹿沼自動車教習所と富山大学の水内豊和准教授との共同研究で作られた教習所用アセスメントツールです。

本人や家族の主観的視点と、TPAの客観的視点からアセスメント(課題分析)を行い、教習で配慮すべき点を明確にします。

専門知識がある「コーディネーター」が分かりやすく教える

つばさプランには「コーディネーター」と呼ばれる、発達障害の専門的知識を有する職員が付きます。                                  

コーディネーターは教習生と指導員の仲介役となり、学科や実技で躓きを感じた時に、本人に必要な支援を行います。

コーディネーターによる支援の例

①学科教習支援
・絵や図を描きながら説明する                            ・授業で分からなかった部分を本人が分かりやすい言葉で説明する
・1人で教室に入るのが不安な教習生に付き添う

②技能教習支援
・後部座席に乗車し、教習生を見守る
・指導員の指導内容を「アドバイスシート」にまとめて渡す

③勉強支援(コーディネーターと1対1で学習する)
・ASDの教習生に対して、実際の運転の様子を交えながら解説をする
・ADHDの教習生に対して、10分など短く時間を区切って勉強を促す
・LDの教習生に対して、教科書を読み聞かせる

▼実際の技能教習支援の様子がこちらです。

コーディネーターは、支援以外にも重要な役割があります。学習会とデータ分析です。

指導員と学習会を開き、障害理解の啓発を行ったり、支援を通して得られたデータから、更に通いやすい教習所づくりに努めたりしています。

サポートチームが教習生を支える

つばさプラン実施校では、発達障害の方への指導に意欲がある指導員を集め、サポートチームを編成しています。

チームで情報共有をしながら、優しく分かりやすい指導を心掛けているのです。

他にも、女性の事務職員から「アドバイザー」を選出し、事務的な面からの助言や、悩み相談をしています。

メンタル面の支援も行う

技能や学科の得意・不得意にかかわらず、発達障害のある方は、何かしらのメンタルサポートを必要とすることがあります。

学科では、あと2、3点で合格した場合でも極端に落ち込んだり、技能に関して言えば、上手くできた所よりも改善点に注目してしまう傾向があります。

自己肯定感の低さなどが背景にあることが多いです。

▼劣等感や自信喪失に関する記事はこちらです。

つばさプランではこのような教習生に対して、できるだけ多く良かった所を具体的に伝えたり、失敗しても「大丈夫」「もう一度やってみよう」といった声掛けをしています。

また、一日の振り返りシートを記入し、その日の気分を可視化するといった工夫も行っています。

つばさプランの料金はどれくらい?

つばさプランの料金は、各教習所によって異なります。お近くの実施校のホームページをご確認ください。             

ただし、乗り越しや検定が再受験となった場合、別途料金が発生します。        これはどこの教習所も共通しています。

参考までに、鹿沼自動車教習所での免許取得までの平均金額は47万円程度です。

合宿免許は「Mランド益田校」がおススメ!

運転免許を取得する手段として、合宿免許を利用する方法もあります。

合宿免許は、短期間で免許取得が可能な点や、通学時間が省ける点がメリットですが、 決められた期間内に免許が取れないと、延泊の可能性がある点がデメリットです。

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橋口
早く免許が取れるのは良いけど、発達障害の方とってはストレスになりそうですね。延泊料金も安くないですし…

島根県のMランド益田校(以下、Mランド)には、「スマイル・トライプラン」という発達障害、知的障害、ひきこもりの方向けの特別支援教習を設置おり、通学、合宿両方に対応しています。

スマイル・トライプランの特徴は、以下の通りです。

スマイル・トライプランの特徴

①トライアル5DAYSで5日間お試しできる
②近隣の障害者支援センターや関係機関と連携した支援を受けられる
③寮に滞在しながら社会的スキルやコミュニケーション能力を伸ばすことが出来る
④18日未満で卒業すると記念メダルが進呈される

各項目について詳しく説明します。

5日間のトライアル期間がある

「合宿免許ってどんなことをするの?」「寮での生活が不安…」という方向けに、5日間のお試し期間を設けています。

体験を経て、「どうしても滞在生活や教習スケジュールに馴染めない…」という方は、全額返金されます。

ただし、以下の3点にはご注意ください。

  1. 普通自動車免許で、合宿免許のみ対象
  2. 入校から5日以内に要相談
  3. Mランドまでの交通費は、受講者の自己負担

専門的な知識を持つスタッフの支援を受けられる

Mランドから車で約15分のところに、「益田障害者就業・支援センターエスポア」があります。

エスポアをはじめとする支援機関は、Mランドに情報提供を行ってます。       Mランドの指導員は、ASD、ADHD、LDなどの発達障害に関する知識や、それらに基づいた対応の仕方を学び、指導員同士でも情報を共有しているのです。

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小野田
外部の専門機関とも協力しているんですね。

また、スマイル・トライプラン受講者も、入校前に支援機関の職員、本人、家族との綿密な面談を行っています。

寮生活で社会性を身につける

Mランドの合宿では、入校から卒業まで敷地内にある寮(ホーム)に滞在します。

ホームでの自立した生活で、社会性を自然に身につけられます。

▼実際のホームの雰囲気は、こちらの動画で見ることができます。

Mランドでは、ホームでの生活を通じて、社会的スキルやコミュニケーション能力を上げることが出来ます。

例を挙げると、誰でも感謝の言葉を伝えることが出来る「ありがとうカード」の制度を導入し、自分の手で感謝の気持ちを書く体験を行っています。

他にも、技能教習の始めと終わりには指導員と必ず「アームハグ(握手)」をしたり、科教習終了後には、健闘を称え合うという意味で全員で「拍手」したりといった、コミュニケーション能力を高めるルールが採用されています。

早く卒業すると、メダルが進呈される(※日数と料金表あり)

合宿日数は、オートマ車で15~25泊、マニュアル車で17~24泊と決まっています。

基準日数18日未満、つまり17日以内に卒業すると記念メダルが進呈され、受講者の自己肯定感の向上にも繋がります。

料金、宿泊保証日数、部屋タイプ、一時帰宅の可否については、以下の表をご参照下さい。

車種料金(税込)宿泊保証日数部屋タイプ一時帰宅の可否
普通オートマ車/スタンダード344,850円15泊相部屋(3~5人)×
普通オートマ車/20日間366,850円19泊個室
普通オートマ車/25日間377,850円24泊個室
普通マニュアル車/スタンダード366,850円17泊相部屋(3~5人)×
普通マニュアル車/20日間388,850円19泊個室
普通マニュアル車/25日間399,850円24泊個室

つばさプランで免許を獲得した人の声

2020年12月時点で、つばさプラン利用者313名のうち、303名の方が運転免許を取得されています。

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橋口
約97%の方が合格しているんですね!

つばさプランを経て免許を取得した方の声を紹介します。

  • 指導員さんやコーディネーターの方が優しくて、分からないところを丁寧に聞いてくれる
  • 周りの人に支えられてよかったと思う
  • 免許が取れたことで自信が付いた
  • 娘は他の教習所では免許が取得できなかったけど、つばさプランで免許が取れて、人間性が豊かになって帰ってきた
  • 全ての授業・試験を1回でクリアでき、本人も喜んで運転している

ご覧の通り、運転免許取得を通して、「できた!」という自信や成長を感じられた方が数多くいらっしゃいます。

行動範囲が広がったことに喜び、ドライブを楽しんでいる方もいますね。

まとめ

今回は、発達障害と運転免許について紹介しました。

今回のまとめ

①発達障害者の運転に対する意識は個人によって違うが、苦手に感じている人が多い
②ADHD、ASD、LDの障害特性によって、躓きやすい部分が異なる
③発達障害に配慮した教習プランは、全国各地で受講できる
④免許を取得することで自信が付いたり、成長を感じたりすることができる

運転免許を取得することで、余暇を楽しんだり、就職の幅が広がったり、生活の質が上がったりと、様々なメリットを得られます。

障害があっても、その機会は平等に与えられて欲しいですね。

最後までお読みいただきありがとうございました。