皆さんこんにちは!本日も知って役立つ情報をみなさんと共有していきます!
今回のキーワードは「発達障害 ワーキングメモリ」についてです。
皆さんは、この言葉をご存じですか? 初めて聞いたという方もいれば、病院で説明を受けた方もいらっしゃいますよね。
この記事では、ワーキングメモリの機能や、発達障害とワーキングメモリの関係性、困りごとの解決策についてお伝えします!
目次
ワーキングメモリは「心のメモ帳」
ワーキングメモリとは、耳や目から入ってきた情報を一時的に保持し、どの情報を覚えておくか、どの情報を削除すればいいかを判断し、整理する脳のはたらきのことです。
例えば、誰かに口頭で伝えられたことをメモするには、紙に書くまでに耳で聞いた内容を覚えておく必要があります。
心のメモ帳と言ってもいいでしょう。
記憶には長期記憶と短期記憶の2種類があります。
- 長期記憶
→記憶の保有時間が数分~一生と長いもの
例)過去に体験した出来事(エピソード記憶)や、「日本の首都は東京である」などの知識や概念(意味記憶)、自転車の乗り方など体で覚えた動作(手続き記憶)
- 短期記憶
→記憶の保有時間が数十秒~一分と短いもの
例)電話口で聞いた電話番号や、初めて会った人の名前
ワーキングメモリは短期記憶に該当します。
ワーキングメモリは4つの働きがある
ワーキングメモリには主に4つの働きがあります。
1974年に、イギリスの心理学者アラン・バドリー氏と、グラハム・ヒッチ氏が提唱した「ワーキングメモリのモデル」が有名です。
次の動画を参考に、それぞれの働きを解説します。
言語性ワーキングメモリ(音韻ループ)
耳から入った情報を一時的に記憶する機能を記憶するはたらきを「言語性ワーキングメモリ(音韻ループ) 」と言います。
授業中に先生が、「算数の教科書を出して、25ページの3番をやりなさい」と口頭で指示した時は、聞こえてきた指示の内容を頭の中で覚えておく必要があります。
あれも含まれます。
言語性ワーキングメモリは、会話や文章理解などの言語的な情報処理を担っています。
先述した通り、用が済んだ情報は削除されます。 話した言葉を一字一句覚えていないのはその為です。
視覚性ワーキングメモリ(視空間スケッチパッド)
耳に対して、目から取り入れた情報を一時的に保持するはたらきが「視覚性ワーキングメモリ(視空間スケッチパッド) 」です。
例えば、黒板やホワイトボードに書かれた文字をノートに写すには、パッと見て、書かれた内容を覚えておく必要があります。
視覚性ワーキングメモリは、この書き写すまでの記憶を指します。
言語性ワーキングメモリと同じく、だんだん忘れていきます。
エピソードバッファ(短期記憶と長期記憶の橋渡し)
エピソードバッファとは、聴覚や視覚から得た複数の情報と、過去の経験や知識をつなげるはたらきです。
「割り算のひっ算のやり方は?」と先生に聞かれた時に、「たてる・かける・ひく・おろす」とやり方を思い出す時に使われます。
何かを見たり聞いたりすることで、長期記憶を呼び起こす、という一連の流れをエピソードバッファは担っています。
中央実行系(情報をまとめる司令塔)
中央実行系とは、言語性ワーキングメモリ、視覚性ワーキングメモリ、エピソードバッファから得た情報を基に次の行動を判断するはたらきです。
動画では、下記の例を挙げています。
「130円の本と120円の本を買います。代金は合計でいくらですか。」
という問題に対して、
式 130+120=250
答え 250
「代金はいくらですか。」と聞かれているのにもかかわらず、「円」が付いていないですよね。
つまり、問題が何を求めているのかあやふやなまま計算してしまっているのです。
中央実行系は、耳や目から受け取った情報や、それらを基に思い出した記憶を統合し、これから何をするかを明確にします。
ワーキングメモリが低いとどうなる?
発達障害のお子さんは、ワーキングメモリが低い傾向にあります。
ワーキングメモリが低いと、下記の要素を含む事柄が苦手になりやすいです。
・マルチタスク
・順序の組み立て
・入ってきた情報や、注意の選択
・記憶の保持
・要らなくなった記憶の削除
日常生活において、具体的にはどんな困りごとが起きるのか、解説します。
人の話を最後まで聞けない
発達障害と聞いて、「話が聞けない子」というイメージを持つ方は多いです。
広島大学の研究によると、
- 教員が短い言葉で、的確に言語指示を行った場合、授業参加率は50%以上と、高くなる。
- 一方で、教員が課題や教材の説明や、他の児童が発言する時、ワーキングメモリが低い児童のほとんどが、授業参加率が低下する。
という結果が出ています。
ワーキングメモリが低いお子さんにとって、先生の説明や、友達の話を最後まで聞き続けるのは非常に困難だと推測できます。
言語性ワーキングメモリが低いお子さんにとって、だらだらと長い話や、一文に複数の情報が含まれる指示は、脳内で情報が次々と上書きされるので、大事な部分を聞き漏らしてしまいます。
部屋が散らかりやすく、すぐ物をなくす
発達障害の鬼門である「片付け」も、実はワーキングメモリが深く関わっています。
発達障害と片付けについては、こちらの記事もご参考下さい。
視覚性ワーキングメモリが低いお子さんは、空間を認識する力が弱く、今使っている道具が元はどこに置いてあったかを覚えておくのが困難です。
「使った後は元の場所に戻す」という、片付けの基本が彼らには難しく感じます。
どの場所に物を戻すか分からない→その場に置きっぱなしにする
→部屋中に物が溢れる→何がどこにあるか分からない→物をなくす
対策なしでは、上記のループにハマってしまいます。
勉強が嫌いになる
ワーキングメモリが低いと、授業についていけなかったり、宿題、体操服などの授業で使う道具、提出するプリントなどを忘れてしまうことが頻繁にあります。
これらはいわゆる「生活面」での課題ですが、そもそも発達障害のお子さんは、ワーキングメモリの低さ故に、「文字が読みづらい」「計算ができない」ということも多いのです。
その結果、勉強が嫌いになるだけでなく、自己肯定感の低下や、不登校になる可能性もあります。
漢字が読めない・書けない・覚えられない
ワーキングメモリが低いと、漢字の学習に困難を生じやすいことが多くの研究で発表されています。
漢字が書けない子どもの支援については、こちらの記事も参考にして下さい。
皆さんは漢字をどのように覚えましたか? おそらく、ドリルや教科書を見て、書き写して、読んで覚えた方が多いでしょう。
漢字を正確に書き写すには、複雑に交差する線と線、へんとつくりの間などを認識する力や、書き写すまで記憶を保持する力が求められます。
読みは、音読み訓読み、送り仮名、「今年」のように特別な読みなど、一つの字に対して、色んな音韻の中から、文脈に合わせて適切なものを思い出さなければなりません。
小学生の時はこんなハイレベルなことをやっていたのか…
ワーキングメモリが低いと、漢字の学習に悪影響を及ぼします。
・構造を上手く捉えられない
・間違えて書き写したまま覚えてしまう
・思い通りに鉛筆を動かすことが出来ず、書くのに時間がかかる
・読みづらい字や鏡文字を書く
・新しく習う読み方を中々覚えられない
算数の計算や文章問題が苦手
算数が苦手なお子さんはよくいらっしゃいますよね。 大人でも「数学じゃなくて『算数』の時点で嫌いだった」という声を聞くことがあります。
ワーキングメモリが低いお子さんにとっても、算数は苦痛になりやすい科目です。 特に、筆算、暗算、文章問題につまづきを感じるお子さんが多いことが明らかになっています。
何処に苦手意識を感じやすいか、それぞれ下記にまとめました。
筆算
- 手順が多く、過程を間違えると答えにも影響する
- 繰り上がる時に、次の位に移行する数字を覚えなければならない
例)35+67を筆算した時に、一の位に2を書いて、十の位に1を足して、
1+3+6=10→十の位に0、百の位に1を書く - 数字を書く場所を間違えて、違う位で計算する
暗算
- 答えが11以上だと、指だけで対応できない
- 複数の数字を頭の中だけで覚えておくので、注意力や集中力が必要である
文章問題
- 文章を読み、内容を解き終わるまで記憶しなければならない
- 問題が何を求めているのか、分からなければ解けない
- 答えを求めるプランニングを脳内で行う
- 途中で筆算をするパターンもある
算数はワーキングメモリが低い子ども達に避けられる要素が数多くあることが分かります。
上記3つの共通点は、複数の作業を同時に行い、注意力、集中力を要する点です。
気が散りやすい子、文章を読むのに時間がかかる子など、個別の事情によっては、更に苦痛を強いられるかもしれません。
生きやすくなる為のライフハック
ワーキングメモリが低いと、「ちゃんとしたいのにできない」と思う場面が、人より多く出てきます。
様々な困難を抱えやすいお子さんが、色んな物事に対する「やりにくさ」を軽減するには、どうすればよいでしょうか。
対策として、次の4点が挙げられます。
①伝え方、指示の出し方を工夫する
②ツールを使う
③トレーニングでワーキングメモリを鍛える
認知特性に合わせた伝え方をする
私たちは情報を目で見たり、耳で聞いたり、文章を読んだりして取り入れ、脳で理解、記憶し、表現します。
この一連の流れにおいて、「自分はどの方法だと情報を扱いやすいか?」というのが認知特性です。
認知特性には主に3つのパターンがあります。
①視覚優位…目で見た情報を取り込み、記憶、表現するのが得意
②聴覚優位…耳で聞いた情報を取り込み、記憶、表現するのが得意
③言語優位…読んだ情報を取り込み、記憶、表現するのが得意
ネットでも診断できますので、興味のある方はやってみてください。
発達障害のお子さんは、特定の認知特性が極端に弱い傾向にあります。 例えば、「授業中に話を聞かずにぼーっとしてる子」は聞こえてないのではなく、聴覚から入る情報の処理ができずにいるのかもしれません。
認知特性に合わせた工夫の具体例は、このようになります。 あくまでも一例ですので、別の方法が合うお子さんもいます。
- 重要なことは黒板やホワイトボードに書いて伝える
- 話す内容を短く、用件をシンプルに言う
- 「分かった?」とお子さんに確認する
- メモを渡して、読ませる(聴覚優位のお子さんは音読させると◎)
伝え方を変えてみると、今まで理解出来なかったことが出来るようになり、お子さんの自尊心が高まり、親御さんのストレス軽減に繋がります。
こちらの記事では、視覚優位のお子さん向けの支援方法が書かれています。
ツール(道具)を使って苦手を補う
発達障害は、生まれつき脳の機能に凸凹があります。
凹の部分は、本人に努力を強いるのではなく、ツールを利用しましょう。
インターネットで探すと様々なツールが出てきますが、その一部を紹介します。
【手軽に持ち歩ける】準備OK!こどもチェッカー
通販サイトによって違いますが、価格は700~900円です。
◆価格:700~900円
こちらの商品は、毎朝学校に持っていく物を「見える化」し、スライド操作で持ち物チェックができます!
・忘れ物が多い
・やるべきことを思い出せない
・保護者の方が忙しく、1人で持ち物チェックをしないといけない
持ち物チェック以外にも、「手洗い・うがい」「きがえる」「おてがみをだす」など、多種多様な項目シールが付属しているので、やることリストにも使用可能です。
▼以下、Amazonの口コミです。
評価の高い口コミ
- 遊び感覚で楽しく忘れ物をなくせる
- 子どもが自分で幼稚園の支度ができるようになった
- ランドセルにも付けられる
- これを使ってから息子が忘れ物せずに全部持って帰ってきた
- 一目で×と〇の違いが分かる
評価の低い口コミ
- パネルのスイッチ部分が固い
- キーホルダーが壊れやすい
- これを持つこと自体を忘れる
【時計が読めない子も安心】タイムタイマーモッド
◆価格:2000~4000円
多くの発達障害のお子さんが苦手な時間管理を助けてくれるのが、タイムタイマーモッドです。 真ん中のダイヤルを時計回りに回すだけで、とても簡単に時間設定できます。
このタイマーの一番の利点は、何と言っても「赤いディスク」です。
ディスクは、時間を設定すると現れ、時間の経過とともに減っていき、設定時間になると姿を消します。つまり、残り時間がパッと見て分かるのです。
・時計が読めない、読みづらい
・残り時間が計算できない
・気が散りやすい
・切り替えが苦手
▼実際に使ってみた感想は、以下の通りです。
評価の高い口コミ
- 発達グレーの子にもわかりやすい
- 子どもが「あと少しでやめないといけないな」「あと少しでおでかけだな」がわかるようになった
- 最初はこちらが設定していたが、娘が自分で目標が立てられるようになった
評価の低い口コミ
- タイマーが鳴るまで無音で、存在に気付かない
- 緊張感が欲しい人には不向き
- 値段が高い
レビュー動画がこちらです。
【出し忘れ、かばんの中でぐしゃぐしゃを防ぐ】おたよりポケット
◆価格:1200~1500円
おたよりポケットは、学校から配られたプリントを管理するのにとても役立つアイテムです。
「とりあえずポストに入れておく」という、たったのワンアクションで整理整頓ができ、片付けや提出期限を守るのが苦手なお子さんの「できた!」を実感させてくれます。
・プリントを出し忘れる
・持って帰ってきたことさえも忘れてしまう
・プリントをランドセルやカバンの中でぐしゃぐしゃにしてしまう
白いスペースにご兄弟の名前を書いて使い分けるのもおススメです!
▼Amazonのレビューを紹介します。
評価の高い口コミ
- 「毎日学校から帰ってきたら、ここにプリントを入れる」が習慣づき、プリントがばら撒かれなくなって万々歳
- 子どもが自分から保育園ノートを入れてくれる
- 冷蔵庫に貼って使える
評価の低い口コミ
- 紙製ですぐ潰れる
- 品質に対して値段が高い
- わら半紙が前に折れる
他にも色んなツールがありますので、ぜひ探してみてください。
楽しくワーキングメモリを鍛える
ワーキングメモリを鍛える教材は数多く出版されています。
ですが、「わざわざ教材まで買わなくても…」「あまりお金をかけないで楽しく取り組める方法はないの?」と思われる方もいらっしゃいますよね。
馴染み深い遊びの中には、ワーキングメモリを鍛えるものもあります。
- 神経衰弱
- しりとり
- 計算練習
などです。
次の動画では、親子で楽しみながらワーキングメモリを鍛えられる「単語つなぎゲーム」「伝言遊び」を紹介しています。(1:30~) 道具を使わないので、気軽に日常生活に取り入れてみても良いですね。
市販のものでは、「メモリーカードゲーム」がおすすめです。
◆価格:1300~2100円
裏向きのカードをめくって同じ絵のカードを2枚探す「記憶遊び」や、カードに書いてある日本語と英語の名前を覚える「名前覚え」など、色々な遊び方ができます。
記憶力、集中力、注意力の向上に最適です。
・楽しくワーキングメモリを鍛えたい
・早いうちからトレーニングを始めたい
・記憶力を伸ばしたい
・親子や兄弟、友達と遊びたい
▼口コミの紹介(評価の低い口コミがとても少なかったです!)
評価の高い口コミ
- 2歳でも楽しめる
- イラストがかわいくて何度も「遊ぼう」とねだられる
- 日本語と英語をいつの間に覚えていた
- トランプと違って絵柄を合わせるので幼児にはぴったり
評価の低い口コミ
- 背景や絵柄が似ているものがあり、もう少し工夫してほしかった
まとめ
今回は、発達障害とワーキングメモリについて解説しました。
・ワーキングメモリは目や耳から入ってきた情報を一時的に記憶し、処理する能力である
・発達障害のお子さんは、ワーキングメモリが低い子が多く、学校や日常生活で困難を抱えやすい
・対策として、以下の3つの方法が挙げられる
→①認知特性に応じた伝え方を試みる
②ツールを使って不得意な部分を補う
③遊びやゲームを通してワーキングメモリを鍛える
ワーキングメモリが低いのは、本人のせいでも保護者の方のせいでもありません。
できないことを叱るのではなく、できたことを沢山褒めるといいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。